婚活女子のマチアプ、リアル現場に巻き込まれるゲイの僕

僕には、もう15年以上付き合いのある女友達がいる。もちろん訳知り、つまり僕がゲイであることはとっくに知っている。
彼女はノンケで独身、フリーランスでライターをしていて、話題も多いし一緒にいると楽しい。これまでに彼氏を紹介されたことはないが、ちょっとタイプの店員さんがいるバーや居酒屋に一緒に連れていかれて「ねえ、どう? イケる?」なんて聞かれたことは何度もある。いや、僕に聞かれても……って感じなんだけど(笑)。
婚活モード全開
そんな彼女も40代が見えてきて、子どもを持つことのリミットを意識するようになったらしい。ここ最近は結婚願望が急に高まって、婚活にかなり熱を入れている。中心はマッチングアプリ。
「プロフィール文、これでいい?」「写真、加工しすぎてない?」——男目線でのアドバイスがほしいのだろう。下心なく話せるゲイの僕は、便利な“相談窓口”として常に待機状態になっている。
忘れられない“初リアル”
中でも強烈に覚えている出来事がある。あるとき、彼女がマッチした男性と初めてリアルで会うことになった。普通なら二人きりで会う場面だ。僕も「それは同席しない方がいいよ」と忠告した。
でもどうしても不安だと言われて、結局もう一人のゲイ友人も誘って、男女2人+ゲイ2人=計4人で会うことに。場所はよりによって新宿二丁目のバー。お見合いなのか合コンなのか、なんとも奇妙な場が繰り広げられた。結果は案の定うまくいかなかったけれど、僕の中では“婚活珍事件ベスト3”に確実に入るエピソードになった。
相談は続く、条件は多い
その後も彼女からの相談は絶えない。「この人、どう?」「年収、嘘くさくない?」「なんか老けてない?」……条件多すぎ(笑)。
でも彼女が一番気にしているのは「既婚者じゃないか?」と「ヤリモクじゃないか?」という点。まあ、それは婚活では当たり前なんだけど(笑)。
婚活市場のリアルと彼女の目
実際のところ、彼女にアプローチしてくるのは50代以上が中心。年下の30代からはアクセスがなく、40代前半からも少ないらしい。「老けてる」「禿げてる」と彼女は嘆くけれど、いやいやノンケの50歳なんて普通に老けてるものだ(笑)。
ただ、彼女の“目が厳しい”のにも理由がある。ゲイの世界には年齢不詳で若々しいおじさんが結構いるし、彼女は仕事柄芸能人や業界人に会うことも多い。そんな“若さをキープした人たち”を見慣れているせいで、彼女の基準はどんどん高くなっている。きっと目が肥えてしまったのだろう。
ノンケおじさんの写真事情
ひとつ言えるのは、ノンケおじさんの写真の撮り方がひどい!やっぱり、自撮りは難しいんだと思う。タレントの宣材写真みたいなのは行き過ぎだけど、変な角度や不自然な作り笑いの自撮りよりは、誰かに撮ってもらった自然なスナップ写真の方がよっぽど魅力的に見える。
会ってみると「なんか違う」
最近は、リアルで会ったあとの報告を聞く機会も増えてきた。でも、どうもなかなか進展しないらしい。彼女いわく「実際に会ってみると、なんか違うかなあ…ってなる」のだそうだ。
アプリのプロフィールでは良さそうに見えても、実際に対面すると声のトーンや話し方、ちょっとした仕草に違和感を覚える。その小さな「違う」が積み重なって、気持ちが先に進まなくなるらしい。
トキメキは必要?
別の女友達からは「最後はトキメキを感じなかったらやめた方がいい」とアドバイスされるそうだ。これは僕も同感。やっぱりトキメキを1ミリも感じない相手と結婚するのは、正直難しいと思う。
でも一方で、付き合っていくうちに芽生える感情だってあるはずで、一概には言えないとも思う。ただ——子どもが成人するまでと長い冷えた夫婦生活を耐えてきた女性の立場からは、どう映るのか。僕には正直わからない。
それでも、どうせなら最初に少しでもトキメキは欲しいよね。……まあ、悩むよね。
それでも
そんなこんなで条件は厳しいし、理想と現実のギャップは大きい。でも彼女はまだ婚活を諦めていない。
僕はツッコミ役として横で笑いながらも、心のどこかで「いつかちゃんとフィットする相手に出会えたらいいな」と思っている。