僕のノート

好きだよと言ってしまった初恋 香りに閉じ込めて

ryoheiasada

冬の夜、吐く息が白く混ざる距離で吸い込んだ匂い。
正体はわからないけれど、彼だけが纏う特別な香りだった。
それは今も、胸の奥で静かに息づいている。


香りと記憶のあいだに

初恋。
誰もが一度は経験するけれど、人生でそう何度も訪れるものではない。
(普通は一度だね。「二度目の初恋」ってタイトルの素敵な曲もあるけれど)

特別で、胸が高鳴る時間。だけど、人によっては少し切なくて、ほろ苦い思い出になることもある。
たいていは、うまくいかないからだろう。

同性を好きになったときの苦悩は深い。
告白する勇気が出ないどころか、自分の生き方まで揺らいでしまうこともある。


僕の初恋は、同級生

初恋の相手は、高校の同級生――タカヒロくん。
正確には、小学校からの同級生で、恋をしてしまったのは高校生になってからだ。

僕たちは隣の市まで電車で通学していて、毎朝同じ電車に乗って高校へ。
クラスは別だったけど、帰りも一緒になることが多かった。

タカヒロくんは、整った顔立ちで可愛らしく、ジャニーズにいてもおかしくないくらい(…ちょっと言い過ぎかもしれない)。


駅前のポルノ映画館で

ある日、タカヒロが笑いながら話してくれた。
「この前、駅前のポルノ映画館に行ったんだ」
(ポルノ映画館??そんなとこ入ったことない)

さらに声を潜めて、照れ笑い混じりにこう続けた。
「…観てたら、途中で我慢できなくなっちゃってさ」

映画館だからもちろん“行為”はしてないけど、
暗闇の中、熱くなった体が反応し、下着の奥で抑えきれず、何もしないのに発射してしまったらしい――。

当時の僕はそんな話を初めて聞き、耳まで熱くなった。
嫉妬なのか、動揺なのか、めまいがした(笑)
自分でもわからない感情が込み上げてきた。


冬のバス停で

冬のある夜。
屋根付きのバス停で並んで座る僕たち。
タカヒロがぽつりと、「最近、自分の体臭が気になるんだ」と言った。

僕にはまったく気にならなかった。むしろ、すごく好きな匂いだった。
思わず顔を近づけ、首筋にそっと鼻を寄せる。

――ああ、この香りだ。
何の匂いなのか、正体はわからない。
洗いたてのシャツの白さに混ざるような、冬の空気の冷たさと、ほんのり汗の甘さが溶け合った香り。
香水でも柔軟剤でもない、彼だけの匂い。
一度吸い込むと、胸の奥がじんわりと温まり、心の奥にやさしく灯りをともされたような感覚がした。

「うん、そう言われたら(匂い、)するのかなあ。…僕は好きだよ」

その瞬間、胸が跳ねた。
まるで告白してしまったようで、鼓動が速くなる。
あの夜の空気とともに吸い込んだ彼の匂いは、今も記憶の奥で生きている。


あの夜、冬の冷たい空気の中で吸い込んだ香りは、今も胸の奥で静かに息づいている。

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